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見出し あめかぜ日記、時々晴

物の循環の場所(生き物を呼ぶ庭)〜虫観察会

先日、明石市のとあるマンションにて、子供会の皆様のご賛同とご協力を得て「虫取りと観察の会」を開催されました。(企画持ち込みあまがえる)虫観察の指導は(株)テネラルの吉田峰規さんです。

子供たちはとっても熱中し、楽しそうに時間を過ごしていたようです。その様子をご覧くださいませ。

まずは、マンションの敷地内で、それぞれ虫取り網を使ってチョウやハチの仲間(専門家の指導のもと)甲虫の仲間、カメムシの仲間、バッタの仲間などなどなど〜、目標にしていた30種類を超える小さな生き物(昆虫以外にクモやヤモリも)を捕まえました。

その後は室内に戻って、各々が捕まえた虫などを袋に入れて、ホワイトボード上で種類ごとに分類します。その後デジタル顕微鏡を使ってモニター画面に大写しになった虫を観察しました。もちろん普段見ることのないものばかりだったはずです。(少なくともこういう見方は初めての体験!かと。)

子供たちにとっては、普段何気なく通り過ごしていたマンションのお庭スペースの見え方が変わったかもしれません。今後もまだまだ虫の季節は続くのでバッタにコオロギ、カマキリなど追いかける光景が見られるかもですね!

あまがえるとしては、虫取りの会をするのは子供たちの楽しみのためだけではございません。自分達としても、こういう場所に一体どのくらいの種類の小さな生き物がいるのかという興味があるのです。

私たちはお庭や都市部の緑地を風景として楽しむ場所というだけでなく、特に都市部では希少で貴重な「物が循環する場所」と考えています。物が循環するというとピンと来にくいかと思いますが、たとえば落ち葉を例に考えます。

秋から冬にかけて、たくさん落ち葉が落ちますが、その落ち葉を掃き集めて廃棄せずに土にかぶせて残しておくと、ダンゴムシなどの地面近くに住む虫がそれらを食べ、フンをして、小さく分解していきます。さらにそのフンももっと小さい生き物が食べて、さらにもっと小さいフンとなり、それをまた食べる生き物によってさらにさらに小さく小さく分解が進んでいきます。(さらにさらにの連鎖!)

やがて、落ち葉は土の中のミネラルとなり、次の季節にはその葉っぱを落とした植物が生きていくための養分となっていきます。

このように、自然界では生き物が生きる過程で生み出される「廃棄物」が分解されて、また生き物の役に立つかたちで戻ってきます。(廃棄物を出した生き物や別の生き物の役に)

これが物が循環しているということの一例です。(小さな循環と呼びたいと思います)

この小さな循環のように、この場所だけで起こる循環もあれば、場所を超えて生き物が移動することで広いエリアで起こる循環もあります。

山の落ち葉を通して地中に染み込んだ雨水が川に到達し、川の生き物がその雨水の中に含まれるミネラルを養分として生き、さらに川と海を行き来する生き物が別の海の生き物の餌となって、海の生態系が豊かになるというのがその一例です。(大きな循環と呼びたいと思います。)

見逃してはいけないのは、小さな循環も大きな循環も、生き物同士の関係によって(特に食べる食べられるという関係)起きているということです。

子供の虫取りの会から、少し難しい話になってしまってるかもしれませんが、お庭や緑地で物が循環するためにも、当然虫などの小さな生き物(微生物も含みます)から鳥などやや大きめの生き物などが、そこで生きてくれること・寄ってきてくれる事がなくては成り立たないということが言えます。ただ、山にはたくさんの生き物がいるけれど、都市部のお庭くらいでは生き物の数が少なくって循環なんか起きないんじゃないの〜という考えもあっても不思議ではないとも思います。

そこで、あまがえる自身も、こういった都市部のマンションで一体どんな生き物がどれくらいいるものかということに興味が向かうわけです。

そして、一回コッキリだけでなく、こういう観察は続けていくことも重要だと思っています。

続けていく中で、もし、想像通り生き物の数や種類が少ないままであれば、どうすれば増えていってくれるか。(物の循環が盛んに起きてくれる可能性を高めるために)それを造園に携わる私たちが考えていく課題として持ちたいと思っています。起こしたアクションを確かめるためにも、何らかの観察ができるのが理想です。

最後にもっと固い話になります。(恐縮です)今の時代、人類の環境に対する課題は大きく見ると二つあると言われています。

①循環しない廃棄物をどうするか(化石燃料、化石燃料由来の工業製品、核エネルギーの廃棄物などなど)

②生物多様性をどう守っていくか

という2点です。①は循環していない廃棄物が原因となっている「気候変動という問題」や「プラスチックの廃棄物による生態系への影響」も含まれます。

(国際的なルールとしては生物多様性条約や気候変動枠組条約があり、日本も締約国となって毎年のように国際会議が行われています。)

日々暮らしていく中で、国際的な会議で話し合われているようなことは、正直なところ、なんとなくピンとこないかもしれません。よくないとわかっていながらも、プラスチック製品を完全にゼロにすることも現実的ではないと言えるので、そういうニュースを見てもついつい忘れてしまうこともあるでしょう。

ただ、決して少なくない人がこのままでは人類が生きていく環境としては年々過酷になっていくのではないかと、薄々であったとしても感じていると思うのです。(たとえば暑すぎる夏、怖すぎる雨の振り方、ビクビクするくらいの台風のニュース!天気予報のニュースのたびに感じますよね。)

確かに、一気に全てを循環させていく暮らしに移行するのは難しいですが、少なくとも土のある場所において、せめて最小限、循環しやすいものと思われる「落ち葉」や「木を剪定した際に生じる葉っぱ」、「自然に生えてくる草を刈ったもの」、「日々食べている食べ物の残り」など言い換えれば「有機物」だけでもエネルギーを使って燃焼させるのではなく、生き物の力で分解、循環させていきたいなあと思っている次第です。

その循環の場所としてのお庭や緑地において、生き物が増えていくような方向で維持管理をしたり、そういう場所の作り方を目指していきたいと思っています。