5月に工事させて頂いた岡山県赤磐市の古民家リノベを終えて思うことを書かせていただきます。
まずは、ビオトープという言葉の定義を振り返ります。ドイツ語で表記するとbiotopとなりますが、これは2つの部分からできているのだそうです。前半のbioは生き物を表し、後半のtopはギリシャ語のtopos という「場所」を表す言葉が起源のようです。
つまりは、野生の生き物(動植物)が暮らせる場所を表し、例えば草地、沼地、林地、砂浜、干潟といったあるひと塊りの空間を、それぞれ「草地というタイプのビオトープ」とか「砂浜というタイプのビオトープ」という風に使うのが正しい言葉の使い方なのだそうです。
いろんなタイプのビオトープがあれば、それぞれのビオトープに暮らす生き物の種類に多様性が生まれますので、あるタイプのビオトープが減少してくると守る必要が出てくるというわけです。
例えば、今、国際的に湿地タイプのビオトープの面積が減少して、そこにしか暮らせない生き物が減少するのを防ぐために湿地を守ろうという動きが広がるということになっています。
おそらく多くの方々(あまがえるも含めて)は、お庭空間に作られた「池」や「水辺」をビオトープと呼ぶという風に勘違いされていたかと想像します。
この機会に、そもそもの語義を知っていただけると嬉しいです。ちなみに、上記の定義については、日本生態系協会の出版物等から引用しております。
さて前置きが長くなりましたが、この古民家のお庭にも実は池がありまして、なおかつビオトープ目線の考え方にも少し触れつつ書きたかったので、先に言葉の定義について割かせて頂いた次第なのですが、ここで、施工前の写真を見ていただきましょう。
この写真の様なお庭は古民家には、ある意味よく見かける感じと言えなくもないです。
池があって、ひょっとしたら以前は、コイなどが飼われていて、サツキやサザンカなどの刈り込みに、マツが主木で、背景にはカシノキなどの常緑樹の高木が植えられています。
残念ながらマツは枯れていて、カシノキなども先端部が枯れていたり、刈り込みの低木もそれぞれ大きくなりすぎて、ちょっと狭い感じを受け、さらに池もなんとなくですが、池の底が周囲の地面から深くほられているからか近寄りにくい雰囲気でした。
施主様も、あまがえるも、池は残すにしても面積を減らす方向の考え方も持っていたのですが、いろいろと話を聞いていると、
この場所は、大雨が降ると水が溢れることも考えられる場所と聞かされていることがわかったり、実際井戸の水位がとても高く、地中の水位が高いと思わされたり、建物内部の床下にも排水用らしい溝やプールの様に掘られたところが出てきたり、雨が少なかった冬も池の水位がオーバーフローの位置のままだったり
と、この池はきっと排水上非常に重要な役割を持っていて、現状のまま触らない方がいいという考えに固まりました。
ただ、水辺に心理的にも近さを感じられる様に、お庭の中に使われていた石を池の縁近くに積み重ね、水面に近づきやすい石の浜(日本庭園の州浜を真似て)を作りました。
もっと小ぶりな石が多ければ、さらに浜の様に見えたかな^_^
この部分には隙間が生じ、水も入り込める空間なので、カエルなどの水辺の生き物の棲家にもなってくれる可能性も持っています。安定している部分には足を踏み込み以前よりは水面に近づくことも可能となったかと思います。
つまり、段差を少し和らげることで、ヒトも含めた生き物の行き来ができやすい場所となったと言えますが、これはビオトープ目線の空間づくりでは、大切にしたいところでもあります。生き物が池の周囲の空間と水辺という二つのビオトープタイプを行き来できる様になると、この二つの空間を含むお庭全体の環境条件に変化が生じると考えます。
このように、少し手を加えるだけでも、生き物をめぐる環境を変化させることができてしまうので、手を加える上では慎重さも必要にはなってきます。
もともと、池があり、池の背景には土を盛った山の様な部分があるというだけで、いろんなタイプの空間によってできたお庭だといえます。虫や爬虫類、両生類などの小さな生き物や鳥などがやってきやすいし、住みやすい場所だったことも想像できます。
人が見て、近寄りがたかった部分としては、池の周囲の地面がサツキの刈り込み樹形で見えにくかったこともありますし、見た目にも重く感じますので、サツキは枝数を減らすように思い切った剪定をしました。
さらに、池の周囲の地面に野芝を張ったことで、柔らかい雰囲気を感じられる様になったかと思われます。また生き物目線で申しますと、ゆくゆく芝以外に勝手に生えてくる草も生じれば草地のタイプのビオトープに育ってくれて、よりこのお庭に来てくれる小さな生き物が増えることが期待できます。
以前の状態だけでも、この地域の雨の際の大水に、風景を作る中で対応しているこのお庭に、既存の状態を大きく変えるのではなく必要最小限に手を加え、より生き物の力を利用できるようなプランを目指したつもりですが、それは今後のこの庭の変化のあり方を見てからの判断になるかと思います。
古民家の建物ではありますが、アプローチに使った古レンガや芝はよく似合う様に思っていますが、いかがでしょうか?そうでもないでしょうか^_^
最後になりましたが、こちらは6月から新装オープンされたお店でもあります。(住宅兼用の場所)詳しくは、「そば切り 來輪」さんのインスタグラムをご覧くださいませ。とっても素敵なご夫婦がとっても美味しいお蕎麦を作ってくださいます。
是非岡山観光の際にはお尋ね下さいませ^_^