vol.1が現場にもともと「あるもの」を使う。vol.2が、すでに「ある構造物」を再利用する。 そして、今回のvol.3は「お庭だけでなく、周辺の地域に「ある材料」を使う。」というテーマになります。だんだんと小さい視点から、広がってきていること、お分りいただけますでしょうか?(笑)
まずは左の写真から。植栽スペースを作っている様子です。この場所の通気通水性を高めるために、高低差をつけ、掘った溝に「近くの山の竹や木の枝を」埋め込んでいます。 このような竹や枝を難しい言葉でゆうと「疎水材」(そすいざい)と呼び、土管などがない時代におもに行われていた排水の方法です。 ここで強調したいポイントは、竹や木の枝を「近くの林」で調達してきたということ。そばにあるものを、資材として暮らしの中で使うことが、いかに難しくなってきているか。それが、たやすくできることは本当に贅沢!
他に周辺の竹を使った部分の写真をご覧いただきます。左は、テラスの屋根の柱として、右は立水栓の水栓中に使用しています。
屋根の柱はもともとはアルミ製ですが、味気ない感じなので竹でカバーしました。柔らかい感じになったでしょうか。
ちょっと前の時代のように、少しでも近隣の山から得られる資材を使うことのプラス面の一つとして、地域の風景に溶け込むということも言えると思います。それは、前時代の建物を思い起こせばわかりやすいです。茅葺の家に、土壁、地域の松の梁は、地域の自然の風景とともに風土を作っていると言えます。そして、やはり経済的な面にもプラスになってもいます。
最後は北川バックヤード部分についてです。こちらは建物内のフリースペースの部屋から見える場所。今の季節はちょっと分りにくいですが、右の写真の奥を見ていただくと、お隣の田んぼが広がります。能勢のような郊外ならではの風景と言えます。計画前の長尾さんの依頼では、敷地の境界部分に何か仕切りが欲しいということでした。
私たちもよく外構プランで使うような木製フェンスでは、せっかくの田んぼの風景を隠すことになりかねます。そこで考えたのが、「田んぼの風景」にも馴染む稲木を使った「はざ」を作ることでした。(右の写真)季節によっては、本当に刈った稲穂を天日干ししたいところ。秋以外には、例えば草木染をした布を干すようにかけておくのも面白いかなと思います。(本当にワークショップなどで、染めの教室をすることもあるかと思うので。その時には是非。)
もちろん、これも横木は地域の竹を使いました。 支柱は、「知り合いの農家さん」が、使わなくなったものをいただいて使用。 今回のテーマの「周辺の地域にある材料」の中には、「田んぼという風景」や「知り合いの農家さん」のご好意という、資材だけでない、地域固有のものも含まれていると言えるんだと気付かされます。 さて、「地域にあるものを使う」というテーマが伝わりましたでしょうか。
私たちは、人の営みと自然界の営みが重なり合う部分を増やすようなモノづくりをしていきたいと考えています。このomoyaiさんの場所のテーマでもあるのではないかと考え、外回りは、このようなプランになりました。あとは、植物が育ってくれると、もっともっとその意味合いが濃くなっていきます。楽しみ楽しみ!
三回シリーズ読んでいただきありがとうございました。お庭も建物も作る段階はもちろんのこと、そこで暮らしていくことで、その「重なり」がどんどん濃くなるような仕組みを作っていけるように、これからも色々と考えていきたいと思っています。
あまがえる