冒頭の写真は、森は海の恋人という活動を宮城県の気仙沼でされていた畠山重篤さんの著書です。
ぼくが畠山さんのこの活動を知ったきっかけになったのは、もう10年以上前に読んだ、森里海連環学という本です。

ご存知の方も沢山いらっしゃると存じますが、かなり簡単に活動の内容を紹介させていただきます。
畠山さんは、気仙沼で牡蠣の漁をされていて、その漁を質量共に良いものにする方法として、海に直接的に働きかけることではなく(それはそれで、いろいろされていると思いますが)気仙沼港に流れ込む川の上流の山に、落葉広葉樹の苗を植える活動を30年以上前に始められました。
樹木が成長し、落ち葉を落とし、その落ち葉が山の地面の上で腐葉土になっていきます。
その際に、有機酸が滲み出るのだそうですが、その有機酸(フルボ酸というらしい)には、土の中の鉄分を吸い付ける性質があるのだそうです。(そういう物質をキレート物質というのだそうです。)
鉄分を吸いつけたフルボ産鉄は、雨水の中に溶け込みます。そして土に染み込み、やがて川に滲み出て、海に到達します。
川や海の水に不足気味の鉄分が、供給され、その鉄分は、植物性のプランクトンに利用されて植物性プランクトンが豊富な川や海になります。
そうなると、それを餌にする小魚が豊かになり、さらにそれを食べる大きめな魚も増え、当然プランクトンを餌にする牡蠣にもいい効果をもたらすということになります。
畠山さんは、講演会で、(ぼくが唯一畠山さんの生の話^_^を聞いた講演会。)こうおっしゃいました。
「山に木を植えると、落ち葉が増えて、海が豊かになり、近海の魚が豊富になるので、寿司が安くなる^_^」と。
面白い話でした。そして、冒頭の本にも書かれていますが、東北の大震災の時に、一旦気仙沼の海には、津波の際の引き波で生き物がいなくなったのだそうですが、その後の調査で植物性のプランクトンがまた復活していくことがわかったのだそうです。その際、30年間やってきたことが活かされできたんだと、実感したのだそうです。
その後森は海の恋人活動は、あのルイ・ヴィトンから評価を受け、震災からの復興の支援を受けたとお話しされてました。その時に、ルイ・ヴィトンが、これこそが本当のデザインだ、との言葉を添え、畠山さんはとても誇らしく思ったとも。
ぼくは、この講演を聞いた時に思いました。山の落ち葉が海を豊かにするんだったら、山だけではなく、まちの公園や、個人邸のお庭、あらゆる街中の緑地の落ち葉だって同じように、近海を豊かにするはずだと。
あまがえるは、ひとの暮らしの中の落ち葉をゴミにしないという思いで、庭づくりや手入れを行ったり、ゴミにしない方法をワークショップでお話しさせてもらってますが、畠山さんの森は海の恋人活動自体が、そのあまがえるの活動の支えにもなっています。
先日、テレビ番組のお知らせ、インターネットの報道をみて、畠山さんが今年の4月にお亡くなりになられていたニュースを知りました。今回のあめかぜ日記、時々晴は、ぼくが尊敬する活動と畠山さんについてどうしても書いておきたいと思い投稿させていただきました。
畠山さんが講演でおっしゃった言葉を最後に紹介させていただきます。30年もやっていると、30年前に参加してくれた子どもさんがその後大人になり、自分の子供を連れて、また参加してくれたりするんだそうです。
その時に、「この活動は、山に樹木を植えるだけでなく、ひとの心に樹木を植えてきたんだな。と思った^_^」と語られました。