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大切にしていること

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あまがえるが庭づくりで⼤切にしていることを、とある3家族のお庭の物語とともにお伝えしていきます。
⾒た⽬のデザインではなく、むしろ、⾒えにくいところのデザインを⼤切に考えていることが伝わると嬉しいです。

policy #1⼩さな⽣態系としての
庭づくり

池のある庭の⾵景 −小⻄邸(三⽥市)

⼩⻄家の⻑男さんは、⽔⽣昆⾍が⼤好き。庭に⽔辺が好きな昆⾍が来てくれたらいいなあ・・・。そんなご希望をもとに2018年にデザインと施⼯を⾏った⼩⻄さんの庭に、⼩さな池をつくりました。周囲に⽔⽥が広がっているのですが、あえて庭でもお⽶づくりを体験してみませんか?と提案をさせてもらって、池には、稲を少し植えてみることにしたのです。

写真ギャラリーでは、施⼯から4年たった2022年7⽉の池の⾵景も⾒ていただけます。初年度の稲づくりは成功し、今は、こぼれた種から発芽したものが、⼩⻄さんが後から植えたマコモなどと、とても⾃然に共⽣しています。トンボの幼⾍のヤゴも池で育ち、庭ではトンボが⾶び交い、のびやかに育った⽊々ではセミたちが鳴き競っています。3⼈のお⼦さんは、⾍取り網や籠を持って家の周りを⾛りまわったり、芝⽣に寝転んだり、池の縁の⽯からカエルが⾶び込むのを眺めていたり、思い思いに夏の休⽇の朝を過ごしています。

⼩⻄家の夏の1⽇。雑⽊林と⽔辺がある⾃然公園のような庭で。

あまがえるの考え
庭は⼩さな⽣態系

⽇本庭園にあるような池ではなく、ビオトープ(いろんな⽣物が⽣息する空間)としての⼩さな池です。⼩⻄家のこの池は、⾬樋で集めた⾬⽔を、地中に引いたパイプを通して流し込むことで⽣まれました。⼤⾬の時などは池から⽔があふれます。あふれる⽔は、敷地に隣接する⽔路に流れていくように溝を作っているのですが、あふれる⽔のほとんどが⽔路まで⾏かずに溝を通る際に地中に染みていくようなつくりにしています。あまがえるは、庭の役割のひとつを⾬の勢いを緩めることと考えているからです。

この数年、ゲリラ豪⾬、線状降⽔帯などの⾔葉がよく聞かれるようになり、洪⽔の被害を被る地域が増えていますね。⾬が落ちる地⾯がコンクリートやアスファルトで覆われているところでは、⽔は地中に染みていくことなく、どんどん⽤⽔路や側溝へ流れ川に合流し、川はあっという間に増⽔してしまいます。

⾬は、降り落ちたその場所で、まずは植物の表⾯(草や⽊の葉や枝など)でやわらかく受け⽌め、直接⼟に到達させずに、植物の幹や茎などを伝って少しずつ地⾯に染み込ませることができます。⼟に到達しないで植物の表⾯から蒸発する⾬⽔も多く、植物も⽔量のコントロールに⼀役買っているのです。あまがえるは、⾬は降り落ちたその場所でできるだけ植物や⼟の地⾯で受け⽌めること、⾬樋から引いた⾬⽔で池をつくること、草花への⽔やりや外の道具を洗うことに⾬⽔を使うことなど、庭づくりでもできる⽔の循環を形にしていきます。

そしてもちろん⽔だけではなく、草や⽊も、ひとの暮らしとリンクさせながら循環を考えてデザインすることを、あまがえるは⼤切にしています。例えば、⼀本の広葉樹が秋になると落としてくれる落ち葉を集めて、コンポストで堆肥をつくったり、最も簡単な⽅法としては、そのまま⼟の上にかぶせておく(マルチングと⾔います)こと。落ち葉は冬の間、カブトムシやクワガタの幼⾍のお布団になりますし、落ち葉を分解してくれる微⽣物も活発に動いてくれます。堆肥ができたら、庭の⼀⾓に設けた畑にすき込んで野菜を作れば、花の咲く時期にミツバチもやってきて受粉を助けてくれるでしょう。例えばトマトが実ったら、落ち葉のめぐみをもたらしてくれた樹⽊の⽊陰に座って、もぎたてで頬張る幸せも味わえます。

私たち⼈間は、⾃然界のさまざまなものが、お互いに働きあってつくる循環の世界「⽣態系」の⼀員として暮らしています。光、⽔、⾵、⼟。植物や樹⽊、⼩さな⽣き物たち・・・。私たち⼈間も、その良き仲間でいられるように、あまがえるは庭を⼩さな⽣態系と捉えて、お互いの関わりあいや働きあいを健やかに育んでゆけるような庭づくりをめざしています。

庭の中の⼩さな循環をつくるポイント

1.落ち葉や⾃然に⽣えてくる草を利⽤します。

落ち葉や刈った草は、植物や樹⽊の根元を覆うマルチとして利⽤したり、堆肥づくりに活⽤します。

2.樹⽊を剪定して切り落とした枝や葉も利⽤します。

チップにして⼟の地⾯を覆うグランドカバーにしたり、粗朶(そだ。枝を束にしたもの)として、素掘りの溝に活⽤します。

3.コンポスト(堆肥場)をつくります。

あまがえるは、三⽥市シルバー⼈材センター⽵炭班の皆さんが作られた⽵パウダーを使って、「台所から始める循環型の暮らし」というテーマでコンポスト講習会も⾏っています。

上に挙げたようなポイントを押さえた庭づくりには、こんな利点もあります。

  • ある程度は⾃然に任せる庭づくりになるので、⽇々のお⼿⼊れが⼼⾝ともに楽になります。
  • 肥料を購⼊しなくても、植物にとって必要なミネラルが効果的にもたらされます。管理コストも減りますね。
  • ゴミとして処分していたものを資源として使えます。ゴミ処分で発⽣する⼆酸化炭素の削減にも繋がります。

今の僕たちの暮らしは、プラスチックや化⽯燃料など、⼟に還らないもの、循環しないものに囲まれていて、知らず知らずのうちに、僕たちのストレスの原因にもなっているかもしれませんし、世界中で深刻な環境問題を引き起こしています。ひとの健康だけでなく、いろんな⽣き物の⽣命に関わる問題が起きていますね。例えば、海に流れ込んだ⼤量のマイクロプラスチックが⽣き物の内臓を蝕んだり、⿂網が海⿃やカメなどに絡まり命を脅かしたり、そんなニュース映像をご覧になった⽅もいると思います。すべてを変えていくのは難しいものですが、だからこそ、せめて暮らしの中で、できることから良い循環をつくっていきたいと思います。

2通目へ続く